お見合い相手は、アノ声を知る人
全くもう…と踵を返そうとしたら、待て…と言う。
何よ…と振り返ると、カタン…と椅子から立ち上がった。


「ジジイがあんたを食事に誘いたいそうだ。今夜七時半にこの店に来いと言ってたぞ」


差し出されたメモ用紙を見せられ、視線もろくに向けずに行きません…と断った。


「付き合わないと言ったでしょ。貴方から会長にお断りして下さい」


ブイと知らん顔をしてやった。
一度ならず二度までも…と、そのしよう懲りもなさが頭にくる。


「俺が一緒な訳じゃないんだから別にいいだろ。
ジジイのご機嫌でも取って、ついでに断ればいいじゃないのか」


「私の願いなんて聞いてくれる人なんですか?」


孫が逆らえば激怒するって人が。


「それは理由にも寄るんじゃないのかな。あんたに余程の事情があれば、聞き分けないこともないと思うが……」


「何よ、その不確定な話」


「ジジイの気持ちまでを確定できる訳ないだろ」


「怒り出したらどうすればいいの」


「怒り出すのを怖がってたら見合いはナシには出来ないんだぞ。あんたは俺と付き合いたくないんだろ」


< 107 / 213 >

この作品をシェア

pagetop