お見合い相手は、アノ声を知る人
だったら怒鳴られるのを覚悟で自分から話せと言ってくる。


それを聞きながら、もしかして、この間息巻いて彼と付き合わないと宣言したから、会長と話せるチャンスを作ってくれたんだろうかと推察した。


「私の口から断って、それが了承されても貴方は別に構わないのね?」


確認するように聞き返すと、ああ…と頷く。
その様子を見ながら、やっぱり自分に興味があるなんてウソなんだと思った。


 
「男ってホントに口先だけなのね」


そう呟いて離れようとした。
すると、ぎゅっと肘上辺りを掴んで止める。

振り向くと険しい表情をしてる顔が目の前にあって、少しギクリとしてしまった。


「今の言葉、誰と比べた?」


「え…あの…」


ドキン…として口籠もる。
まさか、あの人と…とは言えずに黙ってると、パッと手を離した彼が顔を寄せてきた。


「俺は口先だけで行動するような人間じゃない。あんたが知ってる男と比べるのはやめてくれ」


「く…比べてなんか…」


ただ、貴方の態度を見てそう思っただけなのに。


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