お見合い相手は、アノ声を知る人
結婚されて十年経っても子供が出来ずにいるんだというのは聞いたことがあるけど、夫婦間の距離がどうだとか、そんなのは気にしない方がいいと思ってたんだ。



そんな彼との距離が縮まったのは、半期の決算処理が終わって、打ち上げしようと二人で飲みに行った夜ーーー


乾杯をして料理を突き合って食べた。
仕事から離れると、彼は意外にも男性的で、オフィスで見る雰囲気とは違うんだな…と思った。


お酒の入ったグラスを持つ手が大きいですね…と呟くと、『触ってみるか?』と言って握らせてくれたり、遅くなりそうだから奥さんに連絡しなくていいんですか?と気にすると、『もう寝てしまってるよ』と笑い飛ばしてくる。


『それって、虚し〜!』


そう同情したら、そうだろ?と肯定し、でも、君が一緒だから寂しくないよ…と言ったんだ。


『またまた〜。そういうことを言われたら嬉しいじゃないですか〜』


お酒が入ってた所為もあって、自重も出来ずに喜んでしまった。毎日のように二人で残業してた所もあって、何となく同士みたいな気持ちが生まれてた。



『本気にしますよー』


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