お見合い相手は、アノ声を知る人

ギクッとして立ち止まり、前にいる人を見上げた。
私よりも頭一つ分背の高い彼は、ニヤリと意地悪そうな笑みを見せた。


「言える訳ないか。男と半同棲してたなんて…」


ドキン…と核心に触れられ、私はブルブルと唇を震わせた。


「…そ、それは……」


「さっき言ってた仕事を辞めた理由も嘘なんだろ。
本当はマンションの更新時期が来たからじゃなくて、男と別れたから引っ越したんだよな。
……正直に言えよ。嘘吐いたって、いつかはバレるぞ…って！……イッテー！」


思わずパンッ！とひっぱたいてた。

頬を叩かれた人は驚いた様子で、左手でその場所を押さえ込んでる。

周りにいた人達は弾けた音を聞いて「痴話喧嘩か？」と振り返り、私と彼を見つめながら興味津々といった顔つきで通り過ぎて行く。



「何すんだよ！」


館内に響き渡る様な声で訊ねられたから睨んだ。
掘り返されたくもない過去の話を遠慮もなく言われたのが気に入らなかった。


「グダクダと人の過去を弄ぶのは止めてよ！
私はもう忘れたいのに、どうしてそうやって思い出すようなことを言うの！？」