お見合い相手は、アノ声を知る人
笑いながらそう言うと、急に真面目な顔で近寄られた。
ドキン…と心音が跳ね上がって、あの…と声をかけた。


『……いいよ、本気にしてくれても。
月野さんがいつも一緒に残ってくれるから寂しく一人で仕事せずに済むのは本当だし、心強いと思ってる』


ありがとう…と言う彼から目を離せなかった。

ドキンドキン…と胸の打ち鳴る音が耳の奥から鳴り響いてくるみたいで、マズい…と感じてしまった。



その夜は何もなく別れた。
でも、次の週末に二人きりでオフィスに残っているとーーー


『あってはならないとは思うんだけど、どうしても止められないから言ってしまう。いくら笑い飛ばしてくれてもいいよ。
…だけど、俺は月野さんのことが好きなんだ』


給湯室でお疲れ様のコーヒーを淹れようとしてるところだった。
振り返ると真剣な表情の彼がいて、ドクン…と胸が高鳴った。


『や、山根さん…』


胸の音が高鳴り過ぎて、頭が真っ白になった。


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