お見合い相手は、アノ声を知る人
「ーーそれでも最初は、奥さんがいるのに何を…と言おうとしたの。
だけど、自分も彼に好意を抱いてたから、そう言われて一遍にその想いに惹かれていってしまって。
いけないと思っても…止められなかった……」


彼と外で会う時間が増えて、その時たまたま自分が住んでたワンルームマンションの更新時期が重なった。

新しい所へ引っ越すべきかどうかを迷ってたら、彼が私に提案してきたんだ。


『先で一緒に住めるように少し広い部屋を借りればいいよ。俺も家賃を負担するから』



「あの時、もっとよく考えれば良かったの。
だけど、先では奥さんと別れて、私と一緒になる気があるんだと思うと嬉しくて、つい乗ってしまった……」


休みの日に二人で不動産屋を訪れて内覧した。
『灯台下暗しと言うだろう』…と話す彼の言葉を信じ、オフィスから程近い場所のマンションに決めた。



「……それがあなたの住んでる部屋の隣だったという訳。まさか、あのお見合いの席でまた会うとは思いもしなかったけどね」


話してたら喉が渇いてきて、やっぱり水割りを飲もうかなぁ…と呟いたけど、彼には作ってもらえなかった。

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