お見合い相手は、アノ声を知る人
「罪悪感が無かった訳じゃないのよ。いつも彼が帰った後ではいけない事をしてると反省もしたの。

彼を私の所に通わせちゃいけないと思って、来ないでと何度も言おうと口の先まで出掛かった。

だけど、どうしても言えなくて、だから誰にも相談出来ないし苦しいけど彼がいるから大丈夫…と思って、その苦しみを誤魔化して逃げてたの。

胸が張り裂けそうなくらいあの人のことが好きで、どうしても…手放せなかったから……」


本当に子供だったと思う……。 

その言葉は言えず、少しだけ沈黙が続いてしまった。


カラン…とグラスの中で氷が崩れる音がしてハッとした。

このまま黙っててはいけないと思い、息を吸い込んで結論付けた。


「…ねっ、分かったでしょ。私ってそういう女なの。平気で人の家庭に足を踏み入れてしまうバカ者。

こんな私が貴方と付き合ったり、ましてや結婚なんてあり得ない。
だから、さっさと止めましょ。

さっきの感じだと、貴方のお祖父さんもお母さんも私のことをきちんと調べて知ってるんだと思う。

二人とも何も言わなかったけど、そういうニュアンスの話し方だった」


< 123 / 213 >

この作品をシェア

pagetop