お見合い相手は、アノ声を知る人
そして、勿論この人も私のことを知ってるんだ。
だけど、その上でまだ私と付き合ってもいいと思うのはどうして。

二人が知ってる以外に、彼が何か知ってる事があると言うの?
お祖父さんが言ってた人の真髄というのは、私のことを指してるの?


私の真髄って何?
もしかして、あの夜のことを知ってる?
心が凍てついてしまった夜の出来事を、彼が見てたとでも言うの……?


(ううん、そんなことある筈ない。あの時は誰も居なかったもん……)


考え込んでると、彼が二杯目のロックを作り出した。
私の話には答えず、淡々としてるからムッとした。


「ねぇ、聞いた?私がどんなに最低か分かったでしょ。だからもうお見合いもなかったことにして、付き合いもお断りします」


事情を察してよ…と睨んだ。
彼はロックを作る手を止めて、私を振り返って息を吐いた。


「悪ぶるのは止めにしないか。あんたらしくないぞ」


素直じゃないな…と呆れ、私の為に…と薄い水割りを作ろうと言い出した。


「貴方が私の何を知ってると言うの!?」 


声を荒げると、怒りに似た感情が沸き上がった。

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