お見合い相手は、アノ声を知る人
「その言い方が疑問形じゃないの。断定的な雰囲気で、絶対にそうだよね…と決めてるみたいで。
私は彼にキッパリと突っ撥ねて欲しかったのに、あの人は私を振り向きもしないでーー」



『…ああ、そうだよ』



「ーーその一言で、私とのことはお遊びだったんだと気付かされた。最初から彼にとって大事なのは奥さんだけで、私は一体何だったの…って感じになった……。

一気に力が抜けて、その場に倒れ込みそうだった。だけど、私じゃなくて奥さんが踞ったの……」


ドアの前で膝を折って、お腹を抱えるようにして小さくなった。

玄関の内側にいた彼は慌てて、どうした?と心配そうな声をかけた。


「それが私にかける声とは全然別物なのよ。深い愛情のこもった声で、私は再び心が冷えた…」


最初から蚊帳の外に置かれた存在だった。

彼にとって私はただの止まり木でしかなくて、寝床はきちんと他にあって、それをずっと大事に守ってきたんだ。


それは最初から分かってたことだ。
だけど、いずれそのうちには…と、気持ちが切り替わるのを待ってたのにーー。


< 131 / 213 >

この作品をシェア

pagetop