お見合い相手は、アノ声を知る人
だけど、多額の費用も掛かるらしいからな。
金銭的な窮屈さを感じて遊べなくなった旦那が、あんたに目を付けて手を出しただけのことさ。

最低な野郎に遊ばれて損を見たのはあんたの方だ。
つまらない男に初めてまで捧げて、馬鹿もいいとこだろうが」


「勿体無い」と憎らしげに呟くと、ロックをぐいっと煽った。
今聞かされたことを真実とは受け取れず、ぼうっとしたまま、ウソ…と呟いた。


「本当だ。ジジイが調べさせた内偵ファイルに載ってた。
気の毒だな…とジジイも言ってたぞ。幾ら真実だからって、順平さんには言えないことだな…と」


だから、これからもそれを黙っとけよ…と言い放ち、家族は何かあったと察してる筈だと最後に締めた。



ぼんやりと彼の横顔を見つめてた。

言ってる言葉がホントだとして、それで自分の罪が無くなったとは思えない。

それを全部ナシだと思えば、私があの人を好きだった事実も無くなってしまう。


私はあの人を愛してたんだ。

自分のものにしたくて堪らなくて、こっちを向かせたくて焦ってばかりいた。


求めてばかりの恋だった。

だけど、彼女はそれをしてないーーー




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