お見合い相手は、アノ声を知る人
『戻って来ると信じてるから……』


私よりも長い時間、あの人と一緒に居るからこそ言えたセリフ。
辛いことも楽しいことも、全部一緒に超えてきたからこそ我慢してそう言えた。


私はあの瞬間、彼女の深い愛情に負けたと思った。
自分は彼のことを愛してるつもりだったけど、彼女の深さまでは達してない…と感じた。


どんなに深くあの人と体が繋がっても、その場だけのものしかなくて。
離れてしまうと、心までが何処かに行ってしまいそうで怖かった。


もっと…と願ったのはその所為だ。
彼とずっと繋がってたかったんだーーー。




「酷い……」


彼も、私もーー



そう思うと、ぼろぼろ…と溢れるように涙が流れてくる。
実家へ帰ってから一人の時にしか泣かないようにしてたのに。



「酷い……酷過ぎる……」


今になってそれを聞くなんて。
しかも、あの人からじゃなく、彼なんて。


「俺に言われてもな」


苦笑いする声が聞こえて隣を向いた。
見下ろしてる目線が切なそうに見えたから、余計に涙が溢れてくる。


「……あの日も同じように泣き崩れてたよな。
あんたのアノ声、哀れ過ぎたよ……」


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