お見合い相手は、アノ声を知る人
私は小早川さんのことなんてほぼ何も知らないのに、彼と彼のお祖父さんは、私のことを何かと小耳に挟んでるような雰囲気だった。


「あんたのじいさん、俺をあんたの婿にしたいと散々ジジイに頼み込んでたようだからな」


ジロッと睨まれ、流石に睨み返せない。

お祖父ちゃんならやりかねないかもしれない。
その話が本当ならさっきの言葉の意味も何となくだけど合点がいく。


(私を宜しく…って、そういう意味だったの!?お祖父ちゃん達の間では、もうすっかり話が出来上がってるってこと!?)


茫然と立ち尽くしてると、小早川さんが私の腕を引っ張った。

掴まれた二の腕に痛みが走り、何だと顔を見上げれば、堀の深い眼差しが私のことを見下ろしてる。


ギクリとしながらも怯むもんか…と見返したけど、考えてみればこの人は一番の被害者かもしれない。


私が彼と別れて実家へと帰ってしまったから、知人の孫と見合いをしろと勧められたんだ。



「…離してもらえませんか……」


腕…と呟き、ぎゅっと唇を噛みしめる。
小早川さんは私の体を通路の端に避けさせ、それから掴んでた二の腕を解放した。


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