お見合い相手は、アノ声を知る人
「何があったんだ?」


「ん?」


「カッちゃん、嬉しそうだから」


顔を見ながらそう言われ、ああ、まあね…と笑みが浮かんだ。


「ようやくかな…と思って」


そう言うと何の話かと問われたがーー


「いいからホテルのフロントに電話を頼む。部屋が空いてるかどうか聞いてみてくれよ」


「女の寝込みなんか襲うなよ」


「そんなことしねえよ!」


他の男を思いながら泣いた女に手を出すか。


「余計なこと言ってないで早く!」


急かすと梶さんは、はいはいと笑いながら出て行く。

ドアが閉まるのを確かめてから目線を膝へと落としてみると、会話も耳に入ってない女の寝顔にクスッと笑いが込み上げてきた。



「ようやくこれで一歩前進だな」



小さく呟き、温くなったロックを一気に飲み干したーーー。



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