お見合い相手は、アノ声を知る人
何処に。いや、何故。


「本家の末裔がホテルを経営してるんだ。田舎だけどいいホテルで、港の側に建ってるから美味い魚料理が食べれると評判でさ…」


「貴方の親戚のホテルの自慢話を聞いてる場合じゃありません!」


冗談じゃない…と立ち上がったけど、その途端、プシューっとドアが閉まる音が聞こえて。


「観念しろよ。どうせ明日には帰れるんだから」


ゆっくりと動き出したのぞみの車窓を見つめながら呆然としてしゃがみ込んだ。

どうしてこんなに振り回されることになるの…と呟き、最後にはもういい…と諦めた。


「…あ、家に電話しないと」


「ああ、それなら俺がしておいた。明里のじいさんに本家の墓参りに連れて行くと言ったら『よろしくお願いします』と言われたぞ」


「あーのーねー」


勝手にそんな電話入れて。
それをすんなり「よろしく」と言う祖父も祖父だ。


「もう逃げれないんだから楽しもうぜ。移動販売来たら何買う?冷凍ミカンとか懐かしいよな」


「何でもいいよ、もう!」


やってらんない、とソッポを向いて外の景色を眺めた。

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