お見合い相手は、アノ声を知る人
松花堂風な弁当の中身はいろんな物が入ってて、カニの爪や海老フライなんかの他に、牛肉で巻かれたおにぎりもあったりして。



(美味しそう…)


興味津々で覗き込んでたからだろうか、目線に気づいた彼がクッ…と笑いを噛み、「食べるか?」と向けてきた。


「えっ?いえ別に」


誘惑に負けてはダメだと断ったけど、彼はそんな私が可笑しくて堪らないみたい。


「やせ我慢するなよ。旅は道連れ、世は情けだから」


「何よ、それ」


「さぁ?ジジイの受け売り」


まあ食べてみろと駅弁を前に置かれ、手渡された箸を握りしめて唾を飲み込む。


「…じゃあ、この海老フライだけ」


「メロンも食べていいぞ」


「いいの!?」


はっ。しまった。


赤面してくる私に気づき、彼がブハッ!と吹き出した。


「やっぱり明里は面白い!」


可愛い奴だと笑いながら褒められても、それを素直に喜んでもいいのかどうか。

でもーー


「…いただきます」


パクッと噛り付いた海老フライは、身がプリプリで美味しかった。

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