お見合い相手は、アノ声を知る人
四時間の移動は意外にも快適だった。

隣に座る彼が色々と気遣ってくれて、時には茶化されたり、真面目な話をして場を和ませてくれる。

最初は思わぬ旅行になって憮然としてた私も次第に打ち解け、彼の話を聞くように変わった。


彼が言うには、これから向かうお墓は古いお寺の中にあるんだそうだ。
本家の三代目藩主が建立したお寺らしく、自分も二十年以上前に一度行ったきりらしい。


「どんな風に変わったか見るのが楽しみだな」


そんな言葉でウキウキしてるのを見ると、流石に泊まらずに帰りたいとも言えなくなってしまい、とにかく目的地に着いたら直ぐに(下着を)着替えたいからと願い、衣料品店を見つけたら寄って欲しいと頼めば、それを直ぐに了承してくれた。


のぞみを下車してローカル線に乗り換えて間もなく、青い海が見え始めた。
水平線なんて初めて見るから感動して、窓辺に凭れて写真を撮ったり眺めたりした。


「綺麗ね…」


溜息混じりに漏らせば、そんな私の声に合わせて、そうだな…と声が返る。

不思議とずっと一緒にいた人みたいな感覚に襲われて、きゅっと胸が苦しくなるのを感じた。

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