お見合い相手は、アノ声を知る人
「待て。俺は別に見合い話を取り下げろとは言ってないぞ」


「は?」


ポーチの中から取り出そうとしたスマホを握ったまま彼を見返した。
小早川さんは真面目そうな表情で「見合いも続けて結婚もするつもりだ」と言い放った。


「な、何で!」


…と言うか、どうして!?

この人の頭大丈夫なの!?
私のことも何も知らないくせに何の冗談を言ってるんだ。


「ジョークなら程々にしてよ。私にはそんな気まるでないんだから」


「そんなことを言っていいのか?俺はアノ声を聞いてるんだぞ」


ニヤリと笑った顔は勝ち誇ってるようだ。
あの声…?と呟き、私は頭の中で何のことだと想像した。


「それをこの公衆の面前で言うか?恥をかくのはあんただと思うけどな」


「な…何よ!」


ムキになって近寄ったら、ぽそり…と耳の中に声を吹き掛けられた。


「もう一度聞かせてみろよ。なかなか聞けない声だったぞ」


ドンッ!と体を押し退けて間を空ける。


なかなか聞けない声って何だ!?
私が一体何を言った!?


< 16 / 213 >

この作品をシェア

pagetop