お見合い相手は、アノ声を知る人
埃っぽい如来像はやたらと大きくて、もっときちんと手入れをすれば見事なのに…と呟きながら歩き出す彼を追う。


「墓所はこの裏側なんだ。道が悪いから気をつけろよ」


本堂の裏手に回るとそう言って手を引いてくれた。

鬱蒼とした杉の大木が並ぶ中を歩いてると、絶対に幽霊が出てきそうな雰囲気のする木戸が見えてきた。



「…こ、此処?」


ぎゅっと手を握り返して訊ねると、彼はそうだと言って木戸の脇にある表示板を指差す。


「此処に祀ってあるのは、三代目藩主から数えて奇数代の藩主と奥方の墓なんだ。
両脇には藩の為に力を尽くした親戚や縁者の墓があったりする」


「ひょっとして、その中に私のご先祖のお墓もあるってこと?」


「ああ。そうなるな」


入ろうか…と足を進める彼を思わず引き止めた。
腕が突っ張った彼は振り返り、どうした?と不思議そうに首を傾げてる。


「や…止めない?なんか怖そうだから」


不浄な自分が入ってもいいのかどうか迷った。
  
他人の子供の命を奪うような自分が入れば、彼の先祖にも自分の先祖からも怒られそうな気がする。

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