お見合い相手は、アノ声を知る人
二人で食事をした後、ゆっくりとお湯に浸かり直した。
雨はいつの間にか止み、夜空には満月が浮かんでる。
その明かりに照らされた海の先には対岸の光がちらほらと瞬き、まるで星屑のように輝いて見えた。



「はぁ…」


大きく息を吐いて空を見上げる。


…今夜、もしかすると彼と何かがあるかもしれない。

考えすぎだと思っても、胸が細かく震えてきて逃げ出したい様な心境に陥る。


あんなに優しい人だとは知らなかったからまだ驚いてる。

それでもその優しさに、とことん溺れたい気持ちも無視はできない。


ホントに自分でいいのか…と思う気持ちも無くならない。だけど、もう独りでは居たくない。


あの温もりと優しさに触れたい。

口先だけではない力強さに抱きしめられて、ゆっくりと休みたい。


そしたらどんな怖さに襲われても歩いて行ける。

この先の人生も、きっと笑っていけそうな気がするーーー。



「……だけど、いいのかな…」


そう呟いて、堂々巡りだと笑った。

もう出ようと上半身を引き上げ、浴室の方へと向かい始めた。

< 187 / 213 >

この作品をシェア

pagetop