お見合い相手は、アノ声を知る人
目に入れるものと言えば彼だけで、他のことは何も見ないように意識してたのかもしれない。

彼だけが居ればいいんだ、と自己中心的な思いで凝り固まってた。
だから、あんな不幸を呼んだんだーー。


(……もう二度と同じことは繰り返さない…)


苦しみや悲しさを知ったからそう思う。

大切なものを見失わないように、今度こそしっかり生きてくんだ……。



「明里!」


手を上げて来る彼に向かって走り寄った。

自分の行動に驚いて立ち止まると、彼が私の肩を抱き寄せた。


「待たせたな」


仰ぎ見ると笑顔で。
だから、やっぱり嬉しくなった。


「ううん」


ちっとも待ってない。
貴方はいつも私の側に居てくれるような気がする。


日差しを浴びながら歩き出した。
もう絶対に道を踏み外さないと心に決めたーー。



四時間かけて移動し、やっと昨日と同じ新幹線の駅に辿り着いた。
流石に疲れるな…と零す彼に、今更?と笑って在来線のホームへと歩きだして直ぐ。


目の前を通り過ぎる人と目が合い立ち止まった。

向こうも私に気づくと足を止め、無言で見つめ合ってしまうーー。


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