お見合い相手は、アノ声を知る人
ハッキリとそう言いきる彼を見て、山根さんは「へぇー」と声を漏らした。


「あんなことがあったのに結婚するのか?君はかなり太々しい女だな」


ドキン!と胸が鳴って山根さんを見つめた。
彼は不貞腐れてるような顔つきで、私のことを睨んでる。

自分達夫婦の間に起こったことは、全部私の責任だというような感じで。


二度と道を踏み外さないんだと誓ったあの夜のことが思い出されてゾッとした。

先祖の生まれた地を見て、自分も誰かの為に生きようと思ったけど気持ちも沈む。

やっぱり明るい道なんて歩いてはいけないのかもしれない。

彼の奥さんのお腹にもう一度命が宿るまでは、私は未来を望んではダメなんだ……。



「失礼ですが」


口を挟んだ人は、私の肩に置いた手に力を込めた。
ぎゅっと掴まれ、ハッとしつつも狼狽える。

余計なことを彼が言い出すんじゃないかと思うと、その口を止めたくなって振り返った。


「貴方達夫婦の身に起こったことなら俺も伺ってます。
不幸なことだとは思いますが、その責任を彼女一人に被せるようなことは言わないで下さい。

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