お見合い相手は、アノ声を知る人
「いいの。何でもない」


彼の気持ちを確かめなくてもいい。
彼を必要としてるのは自分だから。


「何だよ。気になるだろ」


言えよと足を組んで振り向く。
胸が弾み、言葉ではなく態度で彼の気持ちが知りたいと思った。


「じゃあ…求めてもいいですか?貴方がどれだけ私を想ってるかが知りたい」


まだ好きだとも言われてない。
口先だけでは人を信じれなくなってるから、態度で教えて欲しいと思った。


「いいけど……明里はいいのか?」


「何が?」


「あいつから頭は切り替わったか?」


そう真剣に聞いてくる彼を眺める。
どうしてそんな聞き方をするのか分からずにいると。


「俺が抱いてるのに、あの男の名前なんて呼ぶなよ」


酔い潰れた時も、泣き疲れて眠った後も、寝言のように山根さんの名前を呼んでいた明かされた。


「ウソ。…ごめん」


知らなかったから驚いた。
俯きながら考え、これでは自分が彼に信じて貰えないんじゃないかと狼狽えた。
だけど。


「…これからはもう間違って言ったりしないと思う。あの人とのことは、全部振り切ったから」


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