お見合い相手は、アノ声を知る人
自信を持ってそれだけは言える。
貴方の背中を借りて、吐き出させて貰った。

奥さんが流産したことで心が痛む時もあるとは思うけど迷わない。


「私が今必要としてるのはあの人じゃなくて一路さんなの。都合がいいことばかり言って悪いけど、私に一から教えて下さい」


「何を」


驚くような顔つきでいる彼に少しだけ微笑む。
何もかも真っ白に戻されたキスの感触を思いながら、缶を手放して彼に寄った。


「人を好きになるということ。
全部初めてだと思ってやり直したい」


貴方の温もりに触れて包まれたい。
過去から続いてきた縁に感謝しながら未来を歩き出してみたい。


「一晩中付き合えと言ったら?」


「努力します」


そう言うと目を見て笑い合った。
抱きしめられてうっとりとその胸に縋る。


昨日一晩中この熱さに包まれるようにして眠った。
暑苦しいかと思ったけど熟睡出来て、そう言えば彼と一緒の時だけよく眠れてた…と思った。


「明日、仕事出来ないかもしれないぞ」


「その時は助けてくれるつもりでしょ?」


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