お見合い相手は、アノ声を知る人
怖かったけど、感謝もしてる。
失った命が必ず次へと渡って行くように、今朝は仏壇を拝んでから出掛けよう。



『いつの世も、子に勝る宝は無しじゃな…』


民話の文章を思い出して、うん…と頷く。
あそこから始まった歴史を、今度は私が未来に語っていくんだ。



(…それを望んでも赦されるかな)


不安がないとは言い切れない。
でも、彼との未来を彩りたい。
バラ色でなくてもいいから、せめて、虹のように七色さえあれば幸せ。



(昨日の稲穂カラーでもいいか)


贅沢は求めないでいよう。
家族が出来て、命が引き継がられていけばいいんだ。



キッチンに入ると父もまだ家に居た。
四人で朝食を囲むのは、私が家に戻ってから初めてのことだ。


三人とも彼とのことは聞いてこない。
だけど、素直にご飯が美味しいと私が言ったから嬉しそうにしてる。


この家で彼と暮らすのもいいな…と思った。
なるべくならそうして欲しいな…と、少しだけ願ったーーー。




END
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