お見合い相手は、アノ声を知る人
そう言えば、お祖父ちゃんが紹介する時に言ってたっけ。


代々うちがお世話になってるとか何とかーー。



「何なのよ、それって」


シャワーを浴びたら祖父に聞いてみようかと思って一階へ下りた。
足音に気づいた猫のマルコが走り寄ってきて、頭から尻尾までを擦り付けてくる。



「マルコ、後でね」


浴室のドアを開けながら挟まないように注意して閉めた。
肌襦袢を脱ぐと全身がしっとりと汗で濡れてる。

本当に暑かった…と思い直し、浴室の中に足を入れた。
サー…と流れ出てくるシャワーの温度を熱めに設定する。

汗ばんでる体を洗いながら思い出したくもない過去の記憶が蘇ってきた。


ゴシゴシと擦る胸もお腹もあの人に愛された。
ウットリするような熱い眼差しをしてた彼を私も確かに愛してたと思う。


だけど、それは形にならない恋だった。
どんなに好きでも実らないものだったと思いつつ、今日再会した人の言葉を思い返した。


(あの人が言ってた声って、やっぱりエッチの時のなんだろうか。私、そんなに大きな声で喘いでたっけ……)


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