お見合い相手は、アノ声を知る人
「はい、そうですか。それを聞いて安心致しました。…はい、畏まりました。明里にもよく申し付けておきますので。…はい。ありがとうございます。どうも、失礼致します」


丁重な言葉遣いのままで通話を切り、じっと様子を窺ってた私の方へと視線を向ける。


「おお、おったのか。明里、丁度いい、今先方から電話があってな」


先方という言葉でお見合い相手の家からだと気付いた。
警戒しつつ口を挟まずにいたら、祖父の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。


「一路君はお前とこのまま付き合いを続けてもいいと言っておるそうだ。結婚に向けても前向きでいると。
良かったじゃないか、あの人ならジイちゃんも安心して冥土に行ける」


何かと言うと直ぐに冥土話が出てくる。
常套句だなと思いつつも鼻で笑い、冗談じゃないと言葉を返した。


「お祖父ちゃん、私言ったよね?お見合いなんて今回限りにしてって。あの人とはもう会わない。結婚願望もないからって」


ちゃんと断ってよと言えば、そういう訳にはいかないと言いだす。
どうしてと声を張り上げると手で制され、ソファに座るよう促された。


< 24 / 213 >

この作品をシェア

pagetop