お見合い相手は、アノ声を知る人
「何よ」


振り返ると祖父が真面目そうな顔つきでいる。
首を傾げると両手を組み、さっきの電話で私の仕事口を紹介されたと言いだした。


「一臣様のオフィスで働かないかと言われたぞ。
お前にその気があるなら、いつでもいいから顔を出すように…とのことだ」


「はあぁ?!どうして私が彼のお祖父さんの会社で働くのよ。お見合いも断ると言ってるのに、そんな都合良く仕事だけ紹介してもらう訳にはいかないでしょ!?」


それくらい考えてよ…と怒ると、祖父はそれでも考えておけと言い張る。


「明里も年齢的には再就職も厳しかろうが。
先方は年齢に関係なく、お前を雇って下さると言うんだから甘えればいい」


「冗談!絶対にヤだから!」


背中を向けて部屋を出て行った。
バタンと音を立ててドアを閉めたから私が本気で怒ってると祖父にも少しは分かっただろう。



「…ねえマルコ、あんたには私の気持ちが分かるよね」


ゴロゴロと胸に擦り寄る猫の頭を撫でて呟く。

どうしてこんなに思いとは違う方向にばかり進むんだろうと思いながら足取り重く部屋へと向かった。


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