お見合い相手は、アノ声を知る人
父はビールを飲み込んでそう吐き出した。
ならないよと大きな口を叩いたけど、職にも就かず、結婚もしないとなれば引きこもってると勘違いされても仕方ない。


「一臣様の会社に就職すればいいんだよ。向こうから良ければと言って下さるんだから」


「……お祖父ちゃん!」


祖父のこぼした言葉に慌てて声を上げる。
母は箸を止めて顔を上げ、父も私の顔を見直した。


「それなら直ぐにでも受けなさい」

「お待たせしたらいけないわ」


二人ともが堰を切ったような慌てぶりで勧めてくる。
何が一体どうなってるの…と怪しい気持ちで聞き返した。


「どうしてそんなに勧めるの?小早川さんとうちって、一体どんな関係にあるの?」


親戚……じゃないよね。
遠縁でもなさそうだし、一体どんなふうに代々お世話になってるんだ。


ちらりと視線を祖父にも送る。

両親と祖父はお互いに黙って目を合わせ「まあ、おいおいに…」と言葉を濁した。


「とにかく小早川さんからそう言われたんなら応じた方がいいよ。あそこなら優良企業だし経営も安定してるしね」


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