お見合い相手は、アノ声を知る人
……でも、だからこそ堪らなく幸せで、抑えきれないくらいあの人のことが好きだと思えたーー。



「だけど、全部が崩されたの。もう二度と恋はしないと思うくらいに、強い気持ちに押し潰された……」


勝負なんて最初からきっと着いてたこと。
私が子供過ぎてそれに気付いてなかっただけ。


「今日会った人もそれを知ったらきっと呆れるに決まってる。今は私と結婚しようなんて思ってても、そんな気持ちはどこかに吹き飛んでしまうんだから」


取り合わないのが一番。
このまま知らん顔を通して最初からなかったことだと思ってくれるのを待つ方がいい。


「ねぇ、それでいいよね?マルコ…」


ゴロゴロと目を細める猫に顔を寄せ、小さな温もりを確かめるように抱きしめた。


真夏なのに心はずっと冷え切ってる。

忘れようと思ってもなかなか忘れられないあの最後の夜のことが思い出されて、辛くてなかなか眠れそうにないな…と思ったーーー。


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