お見合い相手は、アノ声を知る人
翌朝のんびりと起きて一階へ行くと、玄関先に見覚えのある人が立ってた。



「どうして貴方が此処にいるの?」


ひょっとしてまだ寝惚けてるのかな…と頬を抓る。


「どうしてって、あんたのじいさんに呼び出されたからだろ。孫娘が借りたお金を返したいと言われたんだが…」


まだ寝てたのか、呑気で羨ましいな…と付け足され、カッと顔の温度が上がっていく。


「な、何よ、大きなお世話でしょ!」


声を張り上げたところへ祖父が来て、申し訳なさそうに謝った。


「お待たせして申し訳なかった。こちらがお借りした現金です」


茶封筒に入れて手渡すのを見て、私はギロッと睨み付けた。


「お祖父ちゃん、三千円ごときで彼を呼ばなくても…」


あの時、私に諭吉を一枚置いてってくれれば、何も問題はなかったんだ。


「何を言っておるんだ明里、こういうことはできるだけ早く対処した方がいいに決まっとる」


当然のような顔つきで言う。
そりゃ確かにそうだけど、だったら外で返せばいいじゃないかと反論した。


「わざわざ家に呼ばなくても…!」


< 32 / 213 >

この作品をシェア

pagetop