お見合い相手は、アノ声を知る人
「あんた、いい加減服に服に着替えてきたらどうなんだ。
パジャマもエロくていいもんだけど、みっともない方が先立ってるぞ」


ボサボサの髪の毛から爪先までを見つめ、情けねーなと付け加える。


「言われなくても着替えてくるわよ!」


くるりと背中を向け、大慌てで階段を上がった。


「飲んだらさっさと帰ってよ!」


悪態を吐くのを忘れずにドアを閉め、ズルズルと足元に座り込んだ。



「失敗したー、なんたることを…」


そのまま少し後悔。

まさか、玄関先に人がいるとは思わなかった。
しかも、もう二度と会う必要もないと思ってた人がいるなんて。


「お祖父ちゃんってば、この恨み忘れないからね」


逆恨みしつつ普段着に着替え、まさかまだ居たらヤダなと思って、少し綺麗めな服に着替え直した。

顔も洗ってないからメイクは後でいいかと思い、取りあえずは髪の毛をシュシュでさっと結んだ。



「もう居ませんように…」


願いながらドアを開け、階下の様子を窺う。

玄関の三和土には姿が見えない。
やれやれと安堵してドアを開けて下りれば、リビングの方から笑い声が聞こえてきた。



< 34 / 213 >

この作品をシェア

pagetop