お見合い相手は、アノ声を知る人
「そうですか。マルコっていう名前なんですね」


ニャーン…と甘えた鳴き声が聞こえてくる。
まだ居たのか…と呆れたけど、それよりも先に既に懐いてる感のあるマルコに呆れ返った。



「よしよし、いい子だ」


どうやらすっかり手懐けられてしまってるみたい。

猫もイケメンが好きなのかな…と思いながらドアに近付き、この人は仕事へ行かなくてもいいの?と考えつつ、ノックはしないで前を通り過ぎた。


服は着替えたけどノーメイクのままだし、こんなスッピンでいる自分を何度も彼には見せたくない。


足音を忍ばせて洗面所へ向かい、ザブザブと顔を洗った。

タオルで押さえてたらリビングのドアが開く音が聞こえ、やっと帰る気になったのか…と廊下に顔を覗かせた。


「おっ、明里、丁度いい。出掛ける準備をしておいで。一路君がお前に用事があるそうだ」


「えっ?」


リビングから出てきた祖父にそう言われ、思わず目が点になる。

タオルで顔を半分隠しながら眉間に皺を寄せる。
私は用事なんてないよと言っても、この流れからして、断っても連れて行かれそうな気配を感じる。


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