お見合い相手は、アノ声を知る人
部長職をしてる父でもとっくに出勤してる時間だ。
もしかしてフリーで仕事でもしてるのかな。


祖父への挨拶が済むと彼に寄って行こうとするマルコの頭を嬉しそうに撫でてる。


ふぅん、性格悪そうだけど猫には優しいのね〜と、やっかみ半分に思ってた。



「…何ノロノロしてんだよ。仕事に穴空きそうだから早く下りて来いよ」


(貴方って、確実に二重人格者でしょ!)


脳内で悪態をついてパンプスを履く。
行ってきますと言ったら祖父が満面の笑みで、行っておいでと返してきた。


「………」


その不気味な笑顔を見つめ、何かがあるとは感じたんだ。

だけど、まさか彼処へ連れて行かれるとは思ってもなくてーーーー





「……何処よ、ここは」


見上げる程高いビルの前で止まった車の助手席から外を眺め、運転席の彼を振り返った。


「何処って、ジジイの経営する会社だが」


全部のフロアが、じゃないぞと言いだす彼に、当然でしょ…と呆れる。

しかし、どう見ても40階以上はありそうな複合ビルだ。
建物の側に掲げられてる看板を見ても、何処かで一度は見かけたことのある企業名ばかり。


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