お見合い相手は、アノ声を知る人
「おい、早く出ろよ」


急いでるのか、彼は既に運転席の外へ出てる。
慌てて自分も出たのはいいけど、この人、このビル内で働いてるの?


「…ねぇ、貴方ってお祖父さんのオフィスで働いてるの?もしかしてとは思うけど、重役か何かなの?」


「そんなこと聞いてどうする」


「別に聞きたくはないけど、そうなのかなと思っただけよ。…あっ、待ってよ!車はいいの?あそこに止めておいて」


間違いなく警察が来れば駐車禁止を貼られそうな公道の端。
見かけだけは国産車で、そんなに高そうではないけど新車のようだ。


「受付に言って駐車場に回して貰うからいいんだよ。それよりも早く。俺がジジイに怒鳴られる」


(だからー、私は貴方のお祖父さんに会う用事はないんだってばー)


心の中で反論したが聞く耳は持たれそうにもない。
とにかく早く早くと急き立てるから、急いで後を追って行った。


ビルの正面まで来て自動ドアが開いた瞬間ーー


(しまった、もっとマシな格好にするべきだった……)


…と後悔を重ねた。


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