お見合い相手は、アノ声を知る人
(どうしよう。こんな大きなトコロで働く自信なんてないよ……)


心の傷も癒えてない状態なのに。
それなのに、こんな大きな物に巻かれるのは怖い。


「あの……私、やっぱりムリだと思います。お仕事もお見合いもお断りした……」


「…おっ?ちょっと待って下さいよ。……ああ、なんだ。順平さんか」



(お祖父ちゃん!?バットタイミング!!)


マナーモードにしてたケータイ電話が揺れたらしい。
お祖父さんは嬉しそうに通話ボタンを押して話し始めた。



「…ああ、そうなんだよ。今、仕事の説明をしておったところだ。……うん、大丈夫。勤めてくれると思っていますぞ。
ワシとしても、そちらのご先祖様にご恩が返せる時が参りましたからな。……絶対に逃しは致しませんよ」



(…いや、思いっきり逃れたくて仕方ないんだけど!?)


さっきからお祖父さんの言ってるご恩返しの意味が掴めない。
長い歴史が絡んでるんだと言った孫の言葉も謎のままだ。


(そうだ。この通話を切ったら詳しいことを聞いてみよう)


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