お見合い相手は、アノ声を知る人
「お祖父ちゃんっ!!」


玄関のドアを開けるなり、私は大声で叫んだ。



「おお、明里、おかえり」


『ニャーン』


祖父の足元をすり抜けて、一目散にマルコが走り寄って来る。
だけど今は、その相手をするどころの気分じゃない。


「どうしてくれんのよ!小早川さんのオフィスで働くことになっちゃったじゃない!」


仕事もお見合いも断ろうとしてたところに電話なんかしてきて…と恨み言を言えば、祖父はとても安堵した表情で「そうか…」と声を漏らす。


「やはり一臣様はお約束を果たして下さったか。曾祖父の言葉を忘れずにいて良かった…」


「あのねー、こっちはちっとも良くないんだけど!?」


ニャーン、ニャーン…と甘えるマルコに負けじと声を張り上げる。

祖父はそんな私に目を向け、就職先が決まったんだからいいじゃないか、と平気そうに答えた。


「良くない!何だか知らないけど、すっごく大きな会社なのよ!?
務めることになった部署も全員すっごく頭が良さそうで…しかも、あの人が上司なの!どうして私が彼の部下にならないといけないのよ!」


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