お見合い相手は、アノ声を知る人
わあわあ…と急き立てるように喋るもんだから、祖父は煙たそうに目を背ける。 
それでも、お腹の中で怒りが膨らんでる私は、お構いもなしに立て続けた。


「会長の小早川さんが言ってたご恩返しって何よ!
それって別に今しなくてもいいんじゃないの!?」


私の代で返さなくても…と言うか、そもそも私にとっては迷惑なだけだ。



「まあ落ち着きなさい」

「ムリよ!」


間髪入れず拒否して、私は框を上がった。


「私はもう少し家でゆっくりしてから仕事を始めたかったの!もう少し気持ちが落ち着いてから。そうでないといろいろとあって気持ちが一杯一杯で……」


半同棲してた彼とのことは、家族の誰にも言えない秘密だ。
それをきちんと胸の中で整理して、踏ん切りが着いてから仕事も探そうとしてたのに……。


「お祖父ちゃんの所為で何もかも計画が崩れたじゃない!あんな大きなオフィスで明日から働くなんて、私はまるで自信がないよ……」


大きな声で話してたら、感極まってきた。
ボロボロと涙が溢れ出して、流石に祖父が慌てだす。



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