お見合い相手は、アノ声を知る人
「明里……」


オロオロとしてるのは分かってるけど、涙は急には引っ込まない。


「どうして、私をあの人とお見合いなんてさせたの?
あの人は私の…」


「私の?」


聞き返す声にハッとして、ぐいっと涙を拭き取る。


「…いいの。…もういい、諦めた。予定外だけど明日からあのオフィスで働く。

だけど、彼とのお見合いは断ってよ!
あの人とは付き合いたくないから。仕事上の付き合いだけで十分だからっ!」


バタバタと階段を上がって勢いよく部屋のドアを閉めた。

暫くするとマルコの声が聞こえてきて、カリカリ…と爪を立てる音もする。

だけど、私はいろんな気持ちが重なってて、マルコの相手をしてあげようとも思えない。



(最低っ。どうしてこんなことになるの)



あの日からずっとそうだ。

全てが私の望まない方向にばかり進んでる。

願わない結果ばかりが増えて、細やかな望みすらも失っていく……。



(もうヤダ。これ以上周りに振り回されるのはイヤ……)


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