お見合い相手は、アノ声を知る人
日本史の授業でもそこんとこは厳しかったと習った筈。許されたの?と問えば、祖父は苦そうな表情に変わった。


「史実では、その三男には子孫が出来なかったと語り継がれとる。事実、実子は亡くなったのだから嘘ではないが、代は引き継がれた。

直義じいさんの子供が養子に入り、現在の小早川家が成り立っておる。…だが、それは誰にも明かしてはならぬ真実として、両家に語り継がれることになった。

公に明かされれば小早川家の存続にも傷を付けることにも為りかねんし、外様大名の三男としての立場が危うくなると考えられたからだ」


「あーつまり、藩主の子孫の体裁を守る為に内緒にした…ってこと?」


「容易く言うならそうなんだが、それだけその三男の方の人望が厚かったんだ。
人の良い方で、身分を越えて農民を助けてくれてたらしい。

奥方様のことも大事にされておられて、死産で悲しんでおると聞いた直義じいさんは、日頃のご恩返しに…と我が子を差し向けたんだ」


「それは深イイ話だと思うけど、差し向けなくても子供はまた産めたんじゃないの?」


< 54 / 213 >

この作品をシェア

pagetop