お見合い相手は、アノ声を知る人
従兄弟のことを褒めると、それではやっぱりいかん!と怒る。妙なとこでプライドが高いな〜と半分呆れて顔を見た。


「明里が付き合っとる男性の一人でも連れて、この家に帰って来たのならワシもこんなにも焦らん。
その人に月野の婿養子になってくれと頼み、代を継いで貰えばいいんだからな。

…だが、お前は一人でこの家に戻った。間もなく三十路になろうとしておる孫娘がいつまでも一人でおるのは見苦しい。
それで、代々引き継がれてきた直義じいさんの言葉を思い出したんだ」



『わが子孫に何ぞ困り事のある時は小早川家を訪ねよ。月野直義の子孫だと名乗れば、必ずやお力添え下さる』



(あー、迷惑な言葉ー)


そんな遺言残してあの世に逝ってたのか。

お陰でこっちはその所為であんな大きなオフィス働くことにはなるし、強引で人のことを「あんた」と呼ぶ様な人が上司でお見合い相手になるなんて。

しかも、間の悪さがバツグンで、私の隠してる過去を見て聞いて知ってる人とはーーー。


いろんな偶然が重なり合って生まれた結果だけど、今の話を聞いた後では、その直義さんの陰謀としか思えない。


< 56 / 213 >

この作品をシェア

pagetop