お見合い相手は、アノ声を知る人
「ワシが一臣様を訪ねた時、すぐに待っておりましたと言って下さった。
明里のことを話したら先祖の恩義を是非お返ししたいと申されて、長男には息子が四人おるからその内の一人と見合いでもさせれば良かろうと仰ってくれたんだ。

それで年頃的にも一番近い三男の一路君が合うだろうと判断して、この度の見合いの運びとなった訳だ」


「それって、まさか彼がウチの婿養子になるのが前提なの?それでもいいって、あの人が言ってるの!?」


「そうだ、いいお話だろうが」


「ちっとも良くなーい!」


両手を上げて「とんでもない!」と声を張り上げた。
私の声が大きかったもんだから、リビングでテレビを見てた両親が祖父の部屋に走ってきた。



「何よ、今の大きな声は」


「明里、近所迷惑もいいところだぞ」


「だって、お祖父ちゃんが〜〜!」


指をさすと祖父は用のなくなった家系図を巻き直そうとしてる。
その姿を見ると軽い目眩に襲われ、「も…いい」と小さく声を出して項垂れた。


小早川家との関係はよく分かった。

だけど、それは江戸時代の不幸だけど深イイ話が起こした偶然。

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