お見合い相手は、アノ声を知る人
その上、終わらない…と泣き言を呟いたら手伝うと言ってくれたり、領収書の束をトレイに乗せて持って行っただけで笑いだしたりもするし……。


「何処かだ」


いろんな意味で正体が今一つ掴めないと言うか、でも、まあ、人はいいんだろうと思うけど。


「いいの。別に気にしなくても」


上座のデスクから離れ自分の席に戻った。
事務処理をしてるフリをしながら彼のことを観察する。



あのお見合いの時と同じく整った顔立ちをしてる彼。

私のような女じゃなくても、いろんな素敵な人と恋愛も出来るだろうに。



(……と言うか、絶対にしてきてるよね)


なのに婿養子に入ってもいいと思うとかヘンだ。
やっぱり何か裏みたいなもんが彼にはきっとあると思う。


(うちの財産をアテにしてるんなら無駄よ。土地も家屋も大してお金にはならないんだから)


そう思いながら仕事を始めた。

きっちり一時間、私の仕事を手伝ってくれた人は、外回りに出かける前に処理した分を総務へと届けてくれて、部署を出る時には私のデスクに立ち寄り、「定時で上がれよ」と囁いて行った。


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