お見合い相手は、アノ声を知る人
「おかえり、明里」


マルコを抱いた祖父が出迎えてくれて、私はその姿を見て小さく溜息を吐く。


「どうだった?初仕事は」


自分の言いだした相談事がキッカケで、あのオフィスに勤めることになった私を案じてたんだろうか、心配そうに眉を八の字にして、窺うような顔をしてる。



「うん…まぁ、何とかなったよ…」


主任の彼に助けて貰ったことは内緒。
言えば流石だ…と言って、必ず褒めるに違いないから。


「一路君は上司としてはどうだ?仕事の出来る孫だと一臣様はお気に入りのようだったぞ」


褒めなくてもやっぱり褒めるのねーと呆れつつ、朝からの仕事ぶりを振り返って思い出した。


「…うん。多分有能だと思うよ。英語の発音も綺麗だったし、サービス精神もあるし」


触れ合ったのは、彼が外回りから戻ってきてた間だけ。
たった一時間だったけど、事務処理も素早くて感心した。


「そうか、そうか」


ご満悦な様子の祖父を見つめ、この様子じゃ、お見合いを断ってないな…と推測する。

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