お見合い相手は、アノ声を知る人
そもそも断る気も無さそうな祖父を見ながら、いっそアノ事を全部バラしてしまおうかとも考えた。


けれど、それをすれば寝込んでしまうかもしれない。

世間では、孫は目に入れても痛くないと言われてるし、その可愛くて堪らない存在の私が、祖父も知らない様な秘密を持ってると分かればどれだけ悲しむことか。



(……やっぱり黙っておくか…)


お見合いはそのうち自分で相手に断ろうと決め、靴を脱いで上がった。マルコはそれを見て祖父の腕から滑り下り、私の足元に擦り寄ってくる。

ピン…と立った長い尻尾の先を絡めるように脹脛に沿わせ、思いきり甘えた声で『ニャーン』と鳴いた。


「マルコ……」


その素直な愛情表現にはいつも感心する。
私には出来ないことだな…と思って眺め、素気無くマルコに言い渡した。


「マルコ、後でね」


声をかけて二階の部屋へと向かう。

マルコは言われたことを理解せず、私の足元を通り抜け、先に部屋の前に辿り着いて待った。

自慢げに前足を揃え、尻尾の先を床にペシペシと叩き付けながら早くドアを開けて…と催促してる。


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