お見合い相手は、アノ声を知る人
「……負けたよ、マルコ」
クスッと笑いながらドアを開けてやった。
嬉しそうにお尻を上げて中に入る姿が、思わずあの人と重なった。
ズキンと胸が痛くなって、そのまま廊下で立ち尽くす。
一月以上経ってもまだ癒えない心の傷に寒気を覚え、ぐっと唇を噛んで部屋に入った。
辛うじて仕事は始めたけど、心の中はまだ寒い。
だけど、この寒さを忘れてはダメなんだ…と思いながら、ガラリと窓ガラスを開けて部屋の中の熱気を外に追い出した。