お見合い相手は、アノ声を知る人
もしも、あのお見合いの時のように言い出してきたら、再びビンタをしてしまうかもしれない。



「前菜のサラダです」


ノリの効いた白いシャツの上に黒のベストを重ねたボーイさんが、カラフルに彩られたサラダを置いてく。

ベビーリーフにパプリカやキューリ、トマトとズッキーニまでが混ざり、見た目にも色鮮やかなサラダだ。


「食べないのか?」


そう聞く相手にぎりっと奥歯を噛んだ。

お腹が空いてない訳じゃないから、ホントは直ぐにでもフォークを握って食べたいところ。
だけど、これを頂くと益々お見合いが断り難そうな気がして食べれない。


「変な遠慮ならするなよ。食べないと作ってくれたシェフがガッカリだろ」


尤もな言い分。
ここは自分のプライドは置いといて、そのシェフの為に食べようと決めた。



「いただきます」


手を合わせるとちらっと向かい側の人が目線を走らす。
それを気にせずフォークを握り、赤いパプリカに突き刺した。

ベビーリーフと一緒に口の中に入れると、マスタードの辛味と何処となく爽やかなレモンの酸味が口の中に広がってく。


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