お見合い相手は、アノ声を知る人
「は?あんた、いい加減三十近い大人だろ?何処の世界にそんな大人を心配する家族がいるんだよ。
それに、心配しなくてもあんたの家にならとっくに俺が連絡してる。酔っ払って帰れそうにもないから、朝になって送りますと言っといた」



「何ですって!」


ガツンと頭の芯が痛んで「あいたー!」と押さえ込む。
腕を握ってた男は手を離して、私の指の上から頭を触った。


「飲み過ぎからくる偏頭痛だな」


右側の側頭部だから偏頭痛には違いない。
指先で押さえる場所を撫でながら「平気か?」と聞いてきた。


「何ならフロントに言って薬でももらおうか」


意外にも紳士な感じで聞くから「いい」と断った。


「寝れば治ると思うので。だから寝かせて下さい」


「勝手にしろよ」


手を頭から離すと自分もゴロンと横になる。
降りて、と言えば無理だろうと言い、どうして?と聞けば、アホじゃないのか?と問い直された。



「ベッド一つしかないんだぞ。何処で寝ろって言うんだよ」


そう言われてようやくこの部屋がダブルベッドのみだと気付く。

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