お見合い相手は、アノ声を知る人
「ヤダ。困るよ」


と言うか、自分自身が嫌になる。

夢から醒めればこの結果なんて。
これが現実じゃなくて、まだ夢なら救われるのに。



「……おい」


足元にいる男が目を閉じたまま口を開けた。
ギョッとして見下ろすと「寒い。早く寝ろ」と不機嫌そうに呟く。


その後で急に口を閉じて寝息を立て始めた。
何よこれ、今のって寝言?…と思いながら顔を見つめる。


整った顔立ちの人は寝顔も綺麗だと聞いたことがある。
確かにそうだな…と思ってるうちに自分もぶるっと震えが来た。



「もういい。とにかく寝よっ」


相手に背中を向けてバサッと布団を被る。

微睡み始めた意識の向こうで、誰かがそっ…と優しく抱き締めてくれたーー。


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