お見合い相手は、アノ声を知る人
『ニャー』


嬉しそうに尻尾を振るマルコを見て、それを抱く祖父の表情を窺った。



(マズい。やっぱり何か勘違いしてる)


ホクホクと頬を緩ませて私を見据えてる祖父は、ウキウキとした声で「おかえり」と言ってきた。


「ただいま。昨夜は帰れなくてごめん」


苦々しい気持ちでそう言うと、「別に構わんぞ」と言い渡される。


「一路君から電話はかかってきたし、お父さんやお母さんも了承済みだ」


「えっ?いや、あの……ホントに変な意味で泊まったんじゃなくて、単純にお酒に酔ってしまって…」


言い訳するけど、いいからいいから…とかわされてしまう。真剣に聞く耳を持たない祖父に呆れながら、仕方ないか…と諦めた。


「ところで一路君はどうした。明里を送りますと言っていたが」


「ああ、あの人なら社用が出来たからって、そっちへ行ったよ。家の人には、呉々もよろしく…って言ってた」


部屋を出る時に頼まれた伝言を告げると、祖父は、うん…と頷いた。


「きちんとしとる人だ。今時にしては珍しい」


「そお?」


「明里はそう思わんか?」


「別に。普通だと思うけど」


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