お見合い相手は、アノ声を知る人
答えながら靴を脱いで上がり、あーやれやれ…と息を吐いた。


「私、お風呂に入る。昨夜は酔っ払ってこの服のまま寝ちゃったし」


『期待しても何もしてないですよ』アピールをして廊下を進む。
私の足元に擦り寄ってくるマルコを蹴らないように注意して、浴室に向かうとドアを閉めた。


カチャと鍵をロックしてブラウスとスカートを脱ぐ。
タクシーに乗るまでシワだらけで恥ずかしかったなぁ…と呟いた。


タクシーの後部座席に乗り込んだ時、彼は申し訳なさそうに「気をつけて帰れよ」と言ってくれた。

朝起きると直ぐに頭痛は平気かと心配してくれて、どうもないと言ったらホッとしたような顔を見せた。



「ホントに人はいいんだろうけどね」


そう呟いてシャワーを浴びる。
熱めの温度で体を流した後は、温めに切り替えて髪を洗った。

数ヶ月前に掛けたパーマは、お風呂に入った時だけ蘇る。
少し毛先がくるん…と巻くのを見て、思い切って切りたいと考えた。


(もう二度とあんなことはしないと誓ったんだ。だから、このパーマともお別れしたい)


< 92 / 213 >

この作品をシェア

pagetop